動物看護師が教える – 水戸動物病院での予防医療の重要性

最終更新日 2024年9月9日 by hedese

動物看護師という仕事を通じて、私は毎日たくさんの動物たちと触れ合っています。飼い主さんとの会話の中で、「うちの子は病気にかかったことがないから、予防医療は必要ないかも」という声をよく耳にします。

しかし、動物病院の現場で働く者として、私はそう考える飼い主さんに声を大にして伝えたいのです。予防医療こそが、愛するペットの健康を守る上で欠かせないのだということを。

今回は、私が勤務する水戸動物病院での取り組みを例に、予防医療の重要性について詳しくお話ししたいと思います。

予防医療の基本

定期健康診断の役割

予防医療の基本は、定期的な健康診断です。水戸動物病院では、年に1回の健康診断を推奨しています。

健康診断では、以下のようなチェックを行います:

  • 全身の触診
  • 体重測定
  • 歯や歯茎の状態確認
  • 心音や呼吸音の聴診
  • 皮膚や被毛の確認

こうした総合的な健康チェックにより、早期の異常発見に努めています。飼い主さんには、健康診断の結果を詳しく説明し、日頃の健康管理のアドバイスも行っています。

ワクチン接種の必要性

ワクチン接種は、感染症予防に欠かせません。水戸動物病院では、犬や猫の種類や年齢に応じて、最適なワクチンプログラムを提供しています。

特に、子犬・子猫のワクチンは重要です。母親から受け継いだ免疫が徐々に低下する生後2〜3ヶ月齢から、ワクチン接種を開始します。狂犬病ワクチンを含む5種混合ワクチンや猫3種ワクチンなど、必要なワクチンを計画的に接種していきます。

ワクチンを接種することで、重篤な感染症から大切なペットを守ることができるのです。

寄生虫予防の重要性

ノミ・ダニ・フィラリアなどの寄生虫は、ペットの健康を脅かす大きな要因です。水戸動物病院では、寄生虫予防薬の処方や定期的な検査を通じて、寄生虫対策をサポートしています。

表1 主な寄生虫とその症状・予防法

寄生虫名 主な症状 予防法
ノミ かゆみ、脱毛 駆除薬の定期的な投与
ダニ 皮膚炎、貧血 駆除薬の定期的な投与
フィラリア 咳、呼吸困難 予防薬の定期的な投与

飼い主さんには、ペットの生活環境に合わせた予防法を提案しています。さらに、野外活動が多い場合など、リスクに応じて検査の頻度を増やすなどの対策も行っています。

寄生虫による被害を未然に防ぐためにも、予防を習慣化することが大切なのです。

水戸動物病院の予防医療への取り組み

徹底した健康チェックシステム

水戸動物病院では、予防医療を重視する方針のもと、徹底した健康チェックシステムを導入しています。

従来の健康診断に加えて、以下のような取り組みを行っています:

  1. 血液検査による内臓機能チェック
  2. レントゲン検査による骨や関節の状態確認
  3. 超音波検査による腹部臓器のスクリーニング

これらの検査を組み合わせることで、体の内側から詳しく健康状態を評価できるのです。早期発見・早期治療につなげることで、ペットの健康寿命を延ばすことを目指しています。

飼い主とのコミュニケーション重視

動物看護師の立場から、飼い主さんとのコミュニケーションはとても重要だと感じています。

水戸動物病院では、健康診断の際に時間をかけて飼い主さんとお話をするようにしています。ペットの日常の様子や、飼い主さんが感じている疑問や不安など、たくさんの情報を聞かせていただきます。

そうして得た情報を元に、一人ひとりのペットに合わせたアドバイスを心がけています。例えば、「毎日の歯磨きが難しい」という飼い主さんには、ガムやデンタルフードの活用を提案したりします。

飼い主さんとの信頼関係があってこそ、予防医療も効果的に進められるのだと考えています。

最新の予防医療知識の共有

動物医療は日進月歩で進歩しています。私たち動物看護師も、常に最新の知識をアップデートし続ける必要があります。

水戸動物病院では、スタッフ同士で予防医療に関する勉強会を定期的に開催しています。海外の文献で紹介された新しい予防法や、学会で得た最新の知見などを共有し合うのです。

こうして得た知識を、飼い主さんへのアドバイスに活かしています。例えば、「犬の認知機能障害を予防するためのサプリメント」など、まだ一般的ではない情報もお伝えするようにしています。

私たちが学び続けることが、ペットと飼い主さんの幸せにつながると信じているからです。

フィラリア症予防の必要性

フィラリア症の危険性

蚊が媒介するフィラリア症は、犬の命に関わる危険な病気です。フィラリア幼虫が体内で成長し、心臓や肺動脈に寄生すると、咳や呼吸困難などの症状を引き起こします。

放置すれば、心不全などの重篤な状態に陥ることもあります。初期段階での発見が難しいだけに、予防がとても大切なのです。

水戸動物病院のフィラリア検診

水戸動物病院では、フィラリア症予防を徹底して呼びかけています。

まずは、定期的なフィラリア検査の実施です。毎年4~6月、蚊の活動が活発になる前に、フィラリア抗原検査を行います。わずかな血液でフィラリア感染の有無を調べられるので、飼い主さんにも負担が少ないのが特徴です。

陰性であれば、その後の予防薬投与に移ります。陽性の場合は、早期の治療を開始できます。

飼い主への予防策アドバイス

フィラリア検査と並行して、飼い主さんへの予防法のアドバイスも欠かしません。

具体的な予防策としては、以下のようなものがあります:

  • 毎月の予防薬投与
  • 蚊の発生しにくい環境づくり(庭の水たまりをなくすなど)
  • 室内飼育の検討(特に夜間は蚊に刺される危険が高いため)

ペットの健康を守るために、できることはたくさんあります。一人ひとりのライフスタイルに合った予防法を一緒に考えていければと思います。

高齢動物の予防医療

シニア期の健康管理の重要性

ペットも年齢を重ねると、様々な病気のリスクが高まります。

例えば、犬では関節炎や心疾患、猫では腎臓病や甲状腺機能亢進症などが多くみられます。こうした病気は、早期発見・早期治療がカギを握ります。

シニア期に入ったら、健康診断の頻度を増やすことをおすすめしています。水戸動物病院では、7歳以上の高齢動物には、半年に1回の健康診断を推奨しています。

水戸動物病院の高齢動物ケア

水戸動物病院では、高齢動物のためのケアにも力を入れています。

例えば、関節サポートのためのサプリメントや、腎臓に優しい療法食の提案など、病気の予防や進行抑制に役立つ情報をお伝えしています。

また、認知機能の低下が気になる場合は、ココロボード等を用いた認知症予防トレーニングを取り入れるのもおすすめです。

ケア内容 具体的な方法
関節サポート サプリメント、体重管理
腎臓ケア 療法食、水分補給
認知症予防 トレーニングゲーム

飼い主さんと二人三脚で、ペットの健やかなシニアライフを支えていきたいですね。

飼い主との協力体制

高齢動物の健康管理において、飼い主さんの協力は不可欠です。体調の変化に気づくのは、いつもそばにいる飼い主さんだからです。

水戸動物病院では、飼い主さんからの情報をとても大切にしています。些細なことでも、どんなことでも構いません。

「最近、お水をたくさん飲むようになった」「階段の上り下りを嫌がるようになった」など、ちょっとした変化もお聞かせください。

そうした情報を元に、私たち動物病院スタッフが健康チェックを行い、適切なアドバイスをさせていただきます。

飼い主さんと動物病院が連携することで、ペットの健康を末永く守っていけると信じています。

まとめ

「うちの子は丈夫だから大丈夫」という声をよく耳にします。

でも、私は動物看護師の立場から申し上げたい。「予防」とは、「丈夫だから」こそ始められるものなのだと。

病気になってからでは、できることに限りがあります。健康なうちから予防に取り組むことで、ペットの健康寿命を大きく延ばせるはずです。

水戸動物病院では、これからも予防医療の重要性を発信し続けます。

定期健診・ワクチン・フィラリア予防・高齢動物ケア……。

飼い主さんと手を携えて、ペットたちの輝かしい未来を創っていきたい。

それが、私にとっての動物看護師の使命なのです。